説明

ファンブレード及びターボファンエンジン組立体

【課題】ターボファンエンジンファンブレード(100)を提供する。
【解決手段】本ターボファンエンジンファンブレード(100)は、前縁(114)及び後縁(116)において結合された第1の側壁(110)と第2の側壁(112)とを含む翼形部(102)と、第1及び第2の側壁間に配置された複数の空気流チャネル(134)とを含み、空気流チャネルは、翼形部の底部に近い位置において加圧空気流を受けかつファンブレード翼形部後縁の近くで加圧空気流を吐出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはターボファンエンジンに関し、より具体的には、ターボファンエンジンの作動騒音レベルを低減するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボファンガスタービンエンジンは一般的に、コアガスタービンエンジン及びバイパスダクトに空気を送るファン組立体を含む。コアガスタービンエンジンは、高圧圧縮機、燃焼器及び少なくとも1つのタービンを含む。圧縮機は、ファン組立体から送られた空気流を加圧し、この加圧空気を燃焼器に送給し、燃焼器において、加圧空気は燃料と混合される。混合気は次に、点火されて高温燃焼ガスを発生する。燃焼ガスは、タービンに送られ、タービンは、燃焼ガスからエネルギーを取り出して、圧縮機を駆動すると共に飛行中の航空機を推進するような有用な仕事を行う。
【0003】
作動時に、ファンは、空気を下流方向にガスタービンエンジンに供給し、また排気ノズルを通して大きな速度で空気を押し出すことによってプロペラと同様に作動して、航空機に推力を提供する。従って、ファンから流出する空気流は、一般的にファンダクトストリーム及びコアダクトストリームと呼ばれる2つの異なる別々の通路内に分割される。より具体的には、ファンは、空気に対して旋回運動を与えた後にファンダクトを通して空気を送る。この旋回運動は、空気が排気ノズルから流出する前に運動量の損失を引き起こす可能性がある。従って、少なくとも幾つかの公知のターボファンエンジンは、バイパスダクトの前方に、空気旋回運動を減少させるのを可能にするためのステータベーンの組を含む。しかしながら、ステータベーンに衝突する空気流は、騒音放出の増大を引き起こす可能性がある。例えば、ファン空気は、そばを通るブレードの速度でステータベーンに衝突し、しばしばブレード通過帯域周波数(BPF)と呼ばれる音を発生する。さらに、ファン流れにおける不安定性は、ステータと相互作用して広帯域騒音を生じる可能性がある。低レベルの燃料消費率で推力要件を増大させる要求に対処するために、より高いバイパス比を有するより大型のターボファンエンジンが製造されるにつれて、ファンは、エンジンから生じる騒音の主要な騒音源となっている。特に空港付近で暮らす住民のためにエンジン騒音レベルを制限又は低減する必要性に対する国際的認識が増すにつれて、ターボファンエンジンにおけるファン騒音を低減するための幾つかの試みが行われてきた。しかしながら、この重要な問題に対処する公知の試みは、エンジン重量の付加的増大のような明らかに望ましくない副次的悪影響を伴った、問題の根源に直接影響しない間接的救済策を含むものであった。
【特許文献1】米国特許第4,128,363号公報
【特許文献2】米国特許第5,806,303号公報
【特許文献3】米国特許第6,004,095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、軽減の可能性がある総エンジン重量で所望の性能レベルを維持しながら、実質的に低下したレベルの騒音しか発生しないターボファンエンジンに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、ターボファンエンジンファンブレードを提供する。本ファンブレードは、ダブテールと、ダブテールに結合された翼形部と、ダブテールを貫通して延びる複数の空気流チャネルとを含み、翼形部は、前縁及び軸方向後縁において結合された第1の側壁と第2の側壁とを含み、空気流チャネルは、加圧空気流を受けかつファンブレード翼形部後縁の近くで加圧空気を吐出するように構成される。
【0006】
別の態様では、ターボファンエンジン組立体を提供する。本ターボファンエンジン組立体は、複数のファンブレードを含む第1のファン組立体と、第1のファン組立体に結合されたタービンとを含み、ファンブレードの少なくとも1つは、ダブテールと、ダブテールに結合された翼形部と、ダブテールを貫通して延びる複数の空気流チャネルとを含み、翼形部は、前縁及び軸方向後縁において結合された第1の側壁と第2の側壁とを含み、空気流チャネルは、加圧空気流を受けかつ翼形部後縁の近くで加圧空気を吐出するように構成される。
【0007】
さらにここでは、ターボファンエンジンを作動させる方法を開示する。この方法は、第1の回転方向に回転するように構成された第1のファンディスクを設ける段階と、第1のファンディスクに対してダブテール、ダブテールに結合された翼形部及びダブテールを貫通して延びる複数のチャネルを含む第1のファンブレードを結合する段階と、翼形部後縁から空気流を吐出するように少なくとも1つのファンブレードを通して空気流を送ってターボファンエンジンの作動騒音レベルを低減するのを可能にする段階とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、長手方向中心軸線16の周りに配置された前方ファン組立体12と後方ファン組立体14とを含む例示的なターボファンエンジン組立体10の一部分の断面図である。本明細書では、「前方ファン」及び「後方ファン」という用語は、ファン組立体12がファン組立体14の軸方向上流に結合されることを示すために使用している。1つの実施形態では、ファン組立体12及び14は、図に示すようにターボファンエンジン10の前端部に置かれる。別の実施形態では、ファン組立体12及び14は、ターボファンエンジン10の後端部に置かれる。ファン組立体12及び14は各々、それぞれのロータディスク13及び15と、各それぞれのロータディスクに結合された複数のファンブレード18及び20とを含む。ファン組立体12及び14は各々、ナセル22内に配置される。ターボファンエンジン組立体10はまた、ブースタ圧縮機24を含む。この例示的な実施形態では、ブースタ圧縮機24は、複数のブレード列を有する半径方向内側ロータセクション26と、複数のブレード列を有する逆方向回転(二重反転)型の半径方向外側ロータセクション28とを含む。この例示的な実施形態では、内側ロータセクション26は、前方ブースタアーム29を介して前方ファン組立体12に結合され、従って前方ファン組立体12と同一の回転方向にかつ同一の回転速度で回転し、また外側ロータセクション28は、後方ファン組立体ディスク31を介して後方ファン組立体14に結合され、従って後方ファン組立体14と同一の回転速度でかつ同一の回転方向に回転する。この例示的な実施形態では、ブースタ24は、該ブースタ24がファン組立体12とファン組立体14との間に位置するように、前方ファン組立体12の軸方向下流に配置される。
【0009】
ターボファンエンジン10はまた、ファン組立体12及び14の下流に位置したコアガスタービンエンジン30を含む。コアガスタービンエンジン30は、高圧圧縮機32、燃焼器34及び高圧タービン36を含み、高圧タービン36は、シャフト38を介して高圧圧縮機32に結合される。作動中、コアガスタービンエンジン30は燃焼ガスを発生し、燃焼ガスは、下流方向に高圧タービン36及び二重反転低圧タービン40に送られ、二重反転低圧タービン40は、ガスからエネルギーを取り出して、それぞれのシャフト42及び44を介してファン組立体12及び14を駆動する。
【0010】
低圧タービン40は、高圧タービン36の下流でコアエンジン30に結合された固定外側ケーシング50を含む。低圧タービン40はまた、外側ケーシング50の半径方向内側に配置された半径方向外側ロータセクション52を含む。外側ロータセクション52は、ほぼ切頭円錐形状を有し、それぞれのロータディスク56に結合されかつそれぞれのロータディスク56から半径方向内向きに延びる複数の円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレード54を含む。この例示的な実施形態はただ4つのロータディスク56を示しているが、外側ロータ52は、本明細書に記載した方法及び装置の技術的範囲に影響を与えずに、あらゆる数のロータディスク56を有することができることを理解されたい。
【0011】
低圧タービン40はまた、外側ロータセクション52に対してほぼ同軸に整列しかつ外側ロータセクション52の半径方向内側に位置した半径方向内側ロータセクション60を含む。内側ロータ60は、それぞれのロータディスク64に結合されかつそれぞれのロータディスク64から半径方向外向きに延びる複数の円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレード62を含む。この例示的な実施形態は、ただ5つのロータディスク64を示しているが、内側ロータ60は、本明細書に記載した方法及び装置の技術的範囲に影響を与えずに、あらゆる数のロータディスク64を有することができることを理解されたい。この例示的な実施形態では、内側ロータ60は、シャフト44を介して後方ファン組立体14に対して回転可能に結合され、また内側ロータ60に対して構造的支持を与えるタービン中間フレーム66に対しても回転可能に結合される。外側ロータ52は、シャフト42を介して前方ファン組立体12に対して回転可能に結合され、また外側ロータ52に対して回転支持を与えるタービン後部フレーム68に対しても回転可能に結合される。
【0012】
この例示的な実施形態では、それぞれのロータディスク64から延びる内側ロータブレード62は、それぞれのロータディスク56から延びる外側ロータブレード54と軸方向にインタディジテイティッド状態で配置されて、内側ロータブレード62がそれぞれの外側ロータブレード54間で延びるようになる。従って、ブレード54及び62は、ロータ52及び60を二重反転させるように構成される。1つの好ましい実施形態では、低圧タービン外側ロータ52、前方ファン組立体12及びブースタ圧縮機内側ロータ26は、第1の回転方向に回転するように構成され、また低圧タービン内側ロータ60、ブースタ圧縮機外側ロータ28及び後方ファン組立体14は、第2の回転方向に回転するように構成される。
【0013】
図2は、図1に示すターボファンエンジン組立体10の前方部分の断面図である。図2に示すように、前方ファン組立体12及びブースタ圧縮機内側ロータ26は各々、第1のコーン70を使用してシャフト42に結合され、また第2のファン組立体14及びブースタ圧縮機外側ロータ28は、第2のコーン72を使用してシャフト44に結合される。より具体的には、コーン70の前端部は、第1のファン組立体12に結合され、コーン70の後端部は、シャフト42に結合される。さらに、コーン72の前端部は、後方ファン組立体ディスク31に結合され、コーン72の軸方向後端部は、駆動シャフト44に結合される。
【0014】
この例示的な実施形態では、ターボファンエンジン10はまた、後方ファン組立体14及びブースタ圧縮機外側ロータ28に対して半径方向の支持を与えるために使用される第1のファン軸受組立体80を含む。より具体的には、またこの例示的な実施形態では、第1のファン軸受組立体80は、該第1のファン軸受組立体80とターボファンエンジン組立体10の例えばファンフレーム84のような構造的構成要素との間に固定結合された軸受支持体82を含む。ターボファンエンジン組立体10はまた、前方ファン組立体12及びブースタ圧縮機内側ロータ26を支持するようにコーン70とコーン72との間に配置された第2のファン軸受組立体90を含む。この例示的な実施形態では、軸受組立体90は、前方及び後方ファン組立体12、14の両方を実質的に固定した軸方向位置に保持するのを可能にするような複数の転動体を含むスラスト軸受組立体である。
【0015】
図3は、図1及び図2に示すファン組立体12及び/又はファン組立体14で使用することができる例示的なファンブレード100の斜視図である。図4は、ファン組立体12及び/又はファン組立体14で使用することができる、図3に示すファンブレード100の第2の実施形態の斜視図である。ファンブレード100は、翼形部102と、これと一体形のダブテール104とを含み、ダブテール104は、ファン組立体12及び/又はファン組立体14(図1に示す)のようなファン組立体内にファンブレード100を取り付けるために使用される。この例示的な実施形態では、本明細書に記載したファンブレードは、超塑性成形及び拡散接合(SPP/DB)型のリブコア中空チタンファンブレードであり、このファンブレードは、より堅牢なファンブレードを形成しかつ同時に総エンジン重量を軽減するようにその根元において約50%の中空である。さらに、ガスタービンエンジンは、ブレードプラットフォーム、スピナ及びブースタスプールにおける、漏洩を最少にするためのシール機構の改良を含む。
【0016】
各翼形部102は、第1の輪郭側壁110と第2の輪郭側壁112とを含む。第1の側壁110は、凸面形であり、翼形部102の負圧側面を形成し、また第2の側壁112は、凹面形であり、翼形部102の正圧側面を形成する。側壁110及び112は、翼形部102の前縁114及びこれから軸方向に間隔を置いた後縁116において結合される。より具体的には、翼形部後縁116は、翼形部前縁114から翼弦方向かつ下流側に間隔を置いて配置される。第1及び第2の側壁110及び112は、それぞれダブテール104に隣接して位置したブレード根元118から翼形部先端120までスパンにわたって長手方向つまり半径方向外向きに延びる。ブレードプラットフォーム122は、ブレード根元118の上方に配置され、それぞれ第1及び第2の側壁110及び112から軸方向にかつ半径方向外向きに延びる。この例示的な実施形態では、各ファンブレード100は、それに限定されないが、チタンのような金属材料を使用して製作される。別の実施形態では、各ファンブレード100は、複合材料を使用して製作される。さらに別の実施形態では、各ファンブレード100は、金属フレーム内に埋め込んだ複合材料を使用して製作される。
【0017】
図3及び図4に示すように、ファンブレード100は、翼形部102を通して空気流を送りかつ翼形部後縁116の近くに形成された複数の後縁開口130を通して空気流を吐出することができるように実質的に中空であり、加圧空気をファンブレード後縁に導入しかつウェーク(後流)を補充し、従って不安定なロータ後流/ステータ相互作用を低減及び/又は排除し、従ってターボファンエンジン組立体10によって発生される対応する騒音を低減するのを可能にすることができる。より具体的には、翼形部102は、複数のリブ又はスティフナ132を含み、これらのスティフナ132は、複数の空気流チャネル134が少なくとも幾つかの隣接するスティフナ132間に形成されるように、第1の側壁110と第2の側壁112との間に結合される。従って、空気流チャネル134は、翼形部102内で側壁110、側壁112及びスティフナ132間に形成される。
【0018】
例えば、翼形部102は、ファンブレード100内に鋳込まれる中子(図示せず)を用いて製作することができる。中子は、中子型(図示せず)内に液状セラミック及び黒鉛スラリーを射出することにより製作することができる。スラリーを加熱して、固体セラミックプレナム中子を形成する。中子は、ファンブレード型(図示せず)内に吊下され、高温ワックスがセラミック中子を取り囲むようにファンブレード型内に射出される。高温ワックスは、凝固し、ブレードプラットフォーム内に吊下されたセラミック中子を有するファンブレードを形成する。セラミック中子を有するワックスファンブレードは次に、セラミックスラリー内に浸漬され、かつ乾燥される。この作業は、ワックスファンブレード上にシェルが形成されるように数回繰り返される。次に、ワックスがシェルから融かし出されて、その内部に中子が吊下された型が残り、この型内に溶融金属が注入される。金属が凝固した後に、シェルを破壊して取り除きかつ中子を除去して、複数のリブ又はスティフナ132と第1及び第2の側壁110及び112並びにスティフナ132間に形成された複数の空気流チャネル134とを含むファンブレード100が形成される。別の実施形態では、空気流チャネル134及び/又は後縁開口130の1つ又は全ては、ドリル加工によって形成することができる。
【0019】
ファンブレード100はまた、翼形部102の外表面から少なくとも部分的に翼形部102を貫通して延びる空気流入口140を含む。より具体的には、またこの例示的な実施形態では、翼形部入口140は、該翼形部入口140を通して空気流を複数のチャネル134内に送ることができるように、第2の側壁112を貫通して形成される。この例示的な実施形態では、翼形部102は、空気流を複数のチャネル134内に送るような寸法にされた単一の翼形部入口開口140を含む。任意選択的に、翼形部102は、各それぞれの開口140がそれぞれのチャネル134内に空気流を送るように構成された複数の翼形部入口開口140を含む。図3及び図4に示すように、各チャネル134は、空気流入口140から翼形部102の少なくとも一部分を貫通して半径方向外向きに延びる。各チャネル134は次に、後縁116に向って軸方向後向きに延び、空気流は次に、複数の後縁開口130を通して送られる。
【0020】
具体的には、またこの例示的な実施形態では、各それぞれのチャネル134は、所定の空気流ボリュームがそれぞれのチャネル134を通して送られかつ各後縁開口130から吐出されるように、また各後縁開口130から吐出される空気流ボリュームが他の後縁開口130から吐出される空気流ボリュームとほぼ等しくなるように、所定の数の後縁開口130と流れ連通状態になっている。
【0021】
例えば、図3及び図4に示すように、各それぞれの通路134は、複数の後縁開口130を通して空気流を送るように構成される。任意選択的に、各それぞれのチャネル134と関連した後縁開口130の数は、後縁116を通過して送られる空気流ボリュームを調整して騒音低減をさらに改善するように変化させることができる。例えば、半径方向外側のチャネル134は、5つ又はそれ以上の開口130と流れ連通状態にすることができ、他方、半径方向内側のチャネル134は、4つ又はそれ以下の開口130と流れ連通状態にして、後縁開口130から吐出される空気流ボリュームを変化させるのを可能にすることができる。
【0022】
図5は、ブレードに沿ったブレード先端付近の平面内で回転させた翼形部断面の平面図である。この拡大図は、ブレード内の空洞並びにブレード後縁への供給孔を示している。これらの孔は、翼弦方向に設置され、翼形部後縁において又は翼形部後縁に隣接して出口を有することができる。各ブレードの後縁に示す一連の矢印は、これらの孔を表している。
【0023】
図6は、通常作動時におけるファンブレード100を含むターボファンエンジン組立体10の一部分の概略図である。作動中、ファン組立体12から吐出された空気流は、ブースタ圧縮機24を通って下流方向に送られる。ブースタ圧縮機24から吐出された空気流の第1の部分150は、送られてきた空気流を翼形部入口140を介してファンブレード100内に向ける複数のファンブレードルーバ141を通して通路134内に供給され、空気流は次に、図3、図4及び図5に示す後縁開口130を介してファンブレード100から吐出される。
【0024】
ファン組立体12及び/又は14から吐出された空気流の第2の部分152は次に、出口案内ベーン組立体154を通って後方ファン組立体ディスク31と軸受支持体82との間に形成された通路156内に送られる。より具体的には、空気流の第2の部分152は、空気流がファン組立体12の方向に向けられるように、通路156を通って軸方向前方に送られる。空気流の第2の部分152をファン組立体12に送るのを可能にするために、ターボファンエンジン組立体10はまた、シール支持構造体160、シール支持構造体160と前方ブースタアーム29との間に結合されたラビリンスシール162、後方ファン組立体ディスク31を貫通して形成された少なくとも1つの好ましくは複数の開口164、及びシール支持構造体160を貫通して形成された第2の複数の開口166を含む。作動時に、第2の空気流部分152は、通路156から開口164を通って、後方ファン組立体ディスク31とシール支持構造体160との間に形成された空洞170内に送られる。第2の空気流部分152は次に、空洞170から、開口166を通りまたブースタアーム29を貫通して形成された複数の開口172を通して、ファンブレード100の開口140内に吐出される。翼形部入口140を介してファンブレード100内に送られた第2の空気流部分152は次に、図3、図4及び図5に示す後縁開口130を介してファンブレード100から吐出される。
【0025】
この例示的な実施形態では、前方ファン12及び/又は後方ファン14は各々、少なくとも1つのファンブレード100を含むことができる。例えば、前方ファン12又は後方ファン14が各々、r個のファンブレードを含むと仮定すると、各ファン組立体は、m個の公知のファンブレードとn個のファンブレード100とを含むことができ、この場合、m+n=rである。任意選択的に、ファン組立体12及び/又はファン組立体14は、n個のファンブレード100を含むように組み立てることができ、この場合、n=rである。
【0026】
従って、エンジン騒音を低減するのを可能にするために、ブースタ吐出空気は、約230°Fよりも低い温度において全ファン空気の約1.2%の比率でファンフレーム支柱を通して抽気される。空気は次に、ターボファンエンジンの固定構造体を通して送られ、加圧空気は次に、ファン組立体内に送られ、ファンブレードダブテール内に向けられる。加圧空気は次に、ファンブレードの中心部を上方に進み、次に後方に進み、ブレードの後縁から外に出る。より具体的には、ファンフレームハブ支柱を通過する空気は、前方サンプ及び軸受ハウジングを囲む固定二重壁プレナム内に吐出される。プレナムの前端部には、回転シールが設置される。この例示的な実施形態では、シールは、ラビリンスシール(図示したような)である。任意選択的に、シールは、ブラシシール又はアスピレーションシールのいずれかとすることができる。加圧空気は次に、ディスクポストスロットを通してブレードダブテールの下方に送られる。従って、ファン組立体は、少なくとも幾つかのファンブレード100を含む、つまり、少なくとも幾つかの公知のファンブレードが、複合材ラップ又はその他の等価の設計による中空鍛造チタンスパーファンブレードを使用して製作されたファンブレード100で置き換えられる。
【0027】
図7は、図1及び図2に示すファン組立体12及び/又はファン組立体14で使用することができる例示的なファンブレード200の斜視図である。ファンブレード200は、実質的にファンブレード100と同様である。従って、ファンブレード200の同様な特徴部は、ファンブレード100に対して使用したのと同一の参照符号を用いて符号付けすることにする。ファンブレード200は、翼形部102及びこれと一体形のダブテール104を含み、ダブテール104は、ロータディスク13及び/又はロータディスク15(図1に示す)のようなロータディスクに対してファンブレード200を取り付けるために使用される。
【0028】
ファンブレード100と同様に、各ファンブレード200の全体的な構成は、プラットフォーム122又はダブテール104を備えた状態或いは備えていない状態のあらゆる従来型の形態を取ることができる。それに代えて、例えば、ファンブレード200は、別個のかつ取外し可能なダブテール104を備えていない従来からブリスクと呼ばれてきた1つの組立体として、ディスク13及び/又はディスク15と一体形に形成することができる。この例示的な実施形態では、各ファンブレード200は、それに限定されないが、チタンのような金属材料を使用して製作される。別の実施形態では、各ファンブレード200は、複合材料を使用して製作される。さらに別の実施形態では、各ファンブレード200は、金属フレーム内に埋め込んだ複合材料を使用して製作される。
【0029】
図7に示すように、ファンブレード200は、ダブテール104の下面242から少なくとも部分的に翼形部102を貫通して延びる空気流入口240を含む。より具体的には、またこの例示的な実施形態では、翼形部入口240は、該翼形部入口240を通してまたダブテール104を通して複数のチャネル134内に空気流を送ることができるように、ダブテール104を貫通して半径方向に形成される。この例示的な実施形態では、ファンブレード200は、複数の開口240を含み、各それぞれの開口240は、それぞれのチャネル134内に空気流を送るように構成される。任意選択的に、ファンブレード200は、空気流を複数のチャネル134内に送るような寸法にされた単一の開口240を含む。図7に示すように、各チャネル134は、開口240から翼形部102の少なくとも一部分を貫通して半径方向外向きに延びる。各チャネル134は次に、後縁116に向って軸方向後向きに延び、空気流は次に、複数の後縁開口130を通して送られる。
【0030】
図6と同様に、図8は、通常作動時における少なくとも幾つかのファンブレード200を含むターボファンエンジン組立体10の一部分の概略図である。作動中、ファン組立体12から吐出された空気流は、ブースタ圧縮機24を通って下流方向に送られる。ブースタ圧縮機24から吐出された空気流の第1の部分150は、翼形部入口240を介してファンブレード200内に送られ、次に後縁開口130を介してファンブレード200から吐出される。ファン組立体12から吐出された空気流の第2の部分152は、シール支持構造体160と前方ブースタアーム29との間に形成された通路250内に流入する。第2の部分は次に、翼形部入口240を介してファンブレード200内に送られ、次に後縁開口130を介してファンブレード200から吐出される。
【0031】
この例示的な実施形態では、前方ファン12及び/又は後方ファン14は各々、少なくとも1つのファンブレード200を含むことができる。例えば、ファン組立体12又はファン組立体14が各々、r個のファンブレードを含むと仮定すると、各ファン組立体は、m個の公知のファンブレードとn個のファンブレード200とを含むことができ、この場合、m+n=rである。任意選択的に、ファン組立体12及び/又はファン組立体14は、n個のファンブレード200を含むように組み立てることができ、この場合、n=rである。
【0032】
以上において、ターボファンファンブレードの例示的な実施形態を詳述している。ターボファンファンブレードは、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろファンブレードは、エンジン騒音を低減するのを可能にするために広汎なターボファンエンジンで使用することができる。例えば、この例示的な実施形態は、二重反転ファン組立体に結合された二重反転タービンを含むターボファンエンジンを示しているが、本明細書に記載したファンブレードはまた、二重反転式でないターボファンエンジンファン組立体にも使用することができることを理解されたい。さらに、幾つかの公知のガスタービンエンジンにおけるファンブレード後縁ブローイング(吹き出し)の初期分析は、それぞれ2.56実効知覚騒音レベル (EPNdB)及び3.54EPNdBの騒音累積マージンにおける改善を示した。本方法は、重量、コスト及び複雑さを最少にするようにするために現存の技術を組み込んでおり、また約0.65〜0.85ポイントだけファン効率を改善する。この研究の結果により、本システムは最新式の二重反転ファンエンジンに適用することができることが実証された。
【0033】
上に論じたように、少なくとも幾つかの公知のターボファンエンジンは、性能を改善するために幅広翼弦ファンブレードを組み込んでいるが、全エンジン騒音レベルを低減すためにファンブレード設計において後縁ブローイングを組み込んだターボファンエンジンは知られていない。具体的には、本明細書に記載したのは、従来型のダブテールを備えた第1のファンブレード列を含む高バイパスターボファンエンジンである。第1のファンブレード列の下流に結合されているのは、4段のインタディジテイティッド二重反転ブースタである。ブースタ圧縮機の下流には、第2のファンブレード列が設けられる。この例示的な実施形態では、ファンブレードは、中実の複合材料を使用して製作され、後縁ブローイングを行うための手段は何ら備えていない。この構成では、ブースタ吐出空気は、ファンブレードの両方の列に供給するのに十分な空気圧源であると見なせる。ブースタは、必要なファン流量を提供するために40%オーバサイズにされる。
【0034】
作動時に、ブースタ吐出空気は、全ファン空気の約2.0%の比率で第2段ブレードのシャンク内の外側コアストリーム流路から抽気される。この空気は、ファンブレードシャンクを通してファンロータ内に供給される。このブレードは、該ブレードを貫通したこれらの空洞を形成するリブコア構造又はその他の構成を備えた中空のチタンである。リブは、空気をブレード後縁に送給する通路を形成する。ブレードシャンクの一方の側面上に設けられたスロットは、空気がブレードの中心部に入ることを可能にする。空気は、ブレードの中心部を上方に進み、次に後方に進み、ブレードの後縁から外に出る。
【0035】
第1のファンブレード列の場合には、ブースタ吐出空気は、ファンモジュールブースタ出口案内ベーンの内径から抽気される。第1のファンブレード列はまた、抽気を捕捉すると共にベーンの構造的一体性を維持する一連のルーバを含む。抽気は、第2段ファンディスクと#1軸受支持体との間を全ファン空気の約1.5%の比率で送られる。ディスク前方のファンディスクトルクアーム内に、孔の列が設けられる。段間シールが、ロータ間での圧力損失を最少化する。前方ブースタアーム内に孔が設けられる。空気が第1段ファンに達すると、空気は、同様な方式でチタンブレード内を通過して、後縁から流出する。ファン及びブースタ空気からターボファンエンジンの部分をシールするのを可能にし、従って空気をファンブレードに送るために、ターボファンエンジンは、シール作用要件に基づいて図示したようなラビリンスシール、ブラシシール及び/又はアスピレーションシールとすることができる二重反転段間シールを含む。
【0036】
この実施形態では、ファンブレードは、超塑性成形及び拡散接合(SPP/DB)型のリブコア中空チタンファンブレードを使用して製作され、また該ファンブレードが根元において約50%の中空になるように製作される。従って、ファンブレードは、公知のファンブレードと比べて寸法変更されており、ダブテール、ディスク及びこの構成のための拘束機構は、より堅牢なブレード構成を形成するように変更され、その結果、漏洩を最少にするためのブレードプラットフォーム、スピナ及びブースタスプールにおけるシール機構の改良を含むエンジンの総重量は軽減される。
【0037】
その結果、幾つかの公知のガスタービンエンジンにおけるファンブレード後縁ブローイングの初期分析は、それぞれ2.56実効知覚騒音レベル (EPNdB)及び3.54EPNdBの騒音累積マージンにおける改善を示し、また約0.65〜0.85ポイントだけファン効率を改善する。本方法は、重量、コスト及び複雑さを最少にするようにするために現存の技術を組み込んでいる。この研究の結果により、本システムは最新式の二重反転ファンエンジンに適用することができることが実証された。
【0038】
様々な特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施することができることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】例示的なターボファンエンジンの断面図。
【図2】図1に示すターボファンエンジンの一部分の断面図。
【図3】図1及び図2に示すターボファンエンジンで使用することができる例示的なファンブレードの斜視図。
【図4】図1及び図2に示すターボファンエンジンで使用することができる別の例示的なファンブレードの斜視図。
【図5】図3及び図4に示すファンブレードの平面図。
【図6】通常作動時における、図3及び図4に示すファンブレードと同様なファンブレードを含む図1に示すターボファンエンジン組立体の一部分の断面図。
【図7】図1及び図2に示すファン組立体で使用することができる別の例示的なファンブレードの斜視図。
【図8】通常作動時における、図7に示すファンブレードと同様なファンブレードを含む図1に示すターボファンエンジン組立体の一部分の断面図。
【符号の説明】
【0040】
10 ターボファンエンジン組立体
12 ファン組立体
13 ロータディスク
14 ファン組立体
15 ロータディスク
16 長手方向中心軸線
18 ファンブレード
20 ファンブレード
22 ナセル
24 ブースタ圧縮機
26 ブースタ圧縮機内側ロータ
28 ブースタ圧縮機外側ロータ
29 前方ブースタアーム
30 コアガスタービンエンジン
31 後方ファン組立体ディスク
32 高圧圧縮機
34 燃焼器
36 高圧タービン
38 シャフト
40 低圧タービン
42 シャフト
44 シャフト
50 外側ケーシング
52 外側ロータ
54 外側ロータブレード
56 ロータディスク
60 内側ロータ
62 内側ロータブレード
64 ロータディスク
66 タービン中間フレーム
68 タービン後部フレーム
70 コーン
72 コーン
80 第1のファン軸受組立体
82 軸受支持体
84 ファンフレーム
90 第2のファン軸受組立体
100 ファンブレード
102 翼形部
104 ダブテール
110 第1の側壁
112 第2の側壁
114 前縁
116 後縁
118 ブレード根元
120 翼形部先端
122 プラットフォーム
130 後縁開口
132 スティフナ
134 翼形部チャネル
140 翼形部入口開口
141 ファンブレードルーバ
150 第1の部分
152 第2の部分
154 出口案内ベーン組立体
156 通路
160 シール支持構造体
162 ラビリンスシール
164 第1の開口
166 第2の開口
170 空洞
172 開口
200 ファンブレード
240 翼形部入口
242 下面
250 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボファンエンジンファンブレード(100)であって、
前縁(114)及び後縁(116)において結合された第1の側壁(110)と第2の側壁(112)とを含む翼形部(102)と、
前記第1及び第2の側壁間に配置された複数の空気流チャネル(134)と、を含み、
前記空気流チャネルが、前記翼形部の底部に近い位置において加圧空気流を受けかつ該ファンブレードの前記翼形部後縁の近くで加圧空気流を吐出するように構成される、
ファンブレード(100)。
【請求項2】
前記翼形部(102)が、前記第1及び第2の側壁(110、112)間で延びる複数のスティフナ(132)を含み、
前記空気流チャネル(134)の少なくとも1つが、2つの隣接するスティフナ間に形成される、
請求項1記載のファンブレード(100)。
【請求項3】
前記翼形部(102)が、根元(118)と先端(120)とを含み、
各前記空気流チャネル(134)が、前記根元から少なくとも部分的に前記先端に向って半径方向外向きに延びる、
請求項2記載のファンブレード(100)。
【請求項4】
前記空気流チャネル(134)が、前記翼形部後縁(116)に向って軸方向後向きにさらに延びる、請求項3記載のファンブレード(100)。
【請求項5】
前記翼形部(102)が、空気流がそれを通して前記複数のチャネル(134)内に送られるように前記第1の側壁(110)を貫通して延びる入口開口(140)をさらに含む、請求項1記載のファンブレード(100)。
【請求項6】
前記翼形部(102)が、前記入口開口(140)から前記複数のチャネル(134)内に加圧空気を送るように構成された複数のルーバ(141)をさらに含む、請求項5記載のファンブレード(100)。
【請求項7】
該ファンブレードが、前記翼形部(102)に結合されたダブテール(104)をさらに含み、
前記ダブテールが、該ダブテールを貫通してほぼ半径方向に延びる少なくとも1つの入口開口(140)を含み、
前記入り開口が、前記複数のチャネル(134)と流れ連通状態になっている、
請求項1記載のファンブレード(100)。
【請求項8】
前記翼形部(102)が、チタン及び複合材料の少なくとも1つを含む、請求項1記載のファンブレード(100)。
【請求項9】
複数のファンブレード(100)を含む第1のファン組立体(12)と、
前記第1のファン組立体に結合された第1のタービン(36、40)と、
を含み、前記ファンブレードの少なくとも1つが、
前縁(114)及び後縁(116)においてその各々が結合された第1の側壁(110)と第2の側壁(112)とを含む翼形部(102)と、
前記第1及び第2の側壁間に配置された複数の空気流チャネル(134)と、を含み、
前記空気流チャネルが、前記翼形部の底部に近い位置において加圧空気流を受けかつ前記ファンブレード翼形部後縁の近くで加圧空気流を吐出するように構成される、
ターボファンエンジン組立体(10)。
【請求項10】
ターボファンエンジン(10)の作動騒音レベルを低減するためのファンブレード(100)であって、
前縁(114)及び後縁(116)においてその各々が結合された第1の側壁(110)と第2の側壁(112)とを含む翼形部(102)と、
加圧空気流が前記翼形部後縁に近い位置において前記翼形部の底部に近い位置における該翼形部後縁から吐出されるように、前記翼形部を通して空気流を送るための手段と、
を含む、ファンブレード(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−19856(P2008−19856A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−124182(P2007−124182)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】